導入事例
東急バス株式会社
運輸部 運行管理課 教育センター 加藤良司 様、センター長 樋口克巳 様、井島聡 様

【職員研修】東急バスオリジナル/ホスピタリティ・マインド一日研修

(DIDビジネスワークショップをカスタマイズでご利用)
暗闇体験前後のワークも含めた「一日研修」として4チーム32名様(2日間)でご利用いただきました!

東急バス株式会社
運輸部 運行管理課 教育センター
(写真左から)加藤良司 様、センター長 樋口克巳 様、井島聡 様(※役職は取材時)
加藤様、樋口様、井島様

お客様に愛されるバス会社をめざし、暗闇で立場が逆転した体験をとおして、ホスピタリティ・マインドを深める場に

ダイアログ・イン・ザ・ダーク(以下DID)のビジネスワークショップをカスタマイズして「一日研修」としてご利用いただいた東急バスのみなさん。各営業所の核となる乗務員の方々がまずは外苑前駅に集合し、本物の暗闇に入る前のウォーミングアップとしてアイマスクを付けた人と介助役の二人一組でDID会場までお越しいただくところから研修はスタート。会場にご到着後も数々のワークショップも行い、充実した内容の研修となりました。今回ご利用いただいた狙いとその後の効果について、アテンドのきのっぴー(木下路徳)とともにお話をうかがいました。

今回、どのような経緯でDIDを研修に取り入れてくださったのですか?

樋口様(以下、敬称略)「バスに乗車されるお客さまの中には、各種のハンディキャップのある方もいらっしゃいます。その方々の気持ちを理解しようとする動きが社内で起こりました。その様な中で実際にお客様に接するバスの乗務員を対象にDIDを体験させ、何か『気付き』を与えようとすることが参加の趣旨です。今回は限られた予算の中で実施するにあたり、営業所が12ある中で核となる乗務員を選抜し、参加させていただいています。加えて様々な場面で乗務員を指導する職員も対象にして、全体の理解を高めようと考えました。私自身は一般体験のほうに事前に参加させていただきました。ふだんは大人しいほうなのですが、暗闇の中では双方向で声を出し合いながら自分の存在を確かめないと、いろんなことがうまくいかないことがよくわかりました」

ありがとうございます! 今回は「一日研修」という特別プログラムでご利用いただきました。井島さん、加藤さんは当日、指導員のお立場から参加されていますが、外苑前駅に集合し、DID会場までアイマスクをした状態でご来場された際、みなさんいかがでしたか?

アイマスクをして移動する参加者の皆様

井島様(以下、敬称略)「全員が初めての体験だったと思います。実際の信号を渡ったり、後ろから自転車が来るのを感じたり、日常の中で見えない体験ができたことで、目の不自由な方がどんな思いをもたれているのか、少しは実感できたと思います。参加者は各営業所から来ているので顔見知りでない場合も多く、一緒に組んだ人に対して最初は『大丈夫かな』『ちゃんと介助してくれるかな』といった不安はあったと思います。でも、『気をつけて』『ここ、木の枝があるからちょっと頭を下げて』とか、気遣いや思いやりのある言葉がけもできていたようで、会場に着くまでにすっかり打ち解けていたようです。
 自分は介助役だったとき、『この先階段あるよ』ぐらいしか案内できませんでした。その人と自分で上るタイミングが違うので、伝えるのが難しかったですね。途中でアイマスク側に交替してからは、周りの音を聞いて情報を得ようとしても、なかなか判断が難しいと思いました」

加藤様(以下、敬称略)「私は今回、オブザーバーとして見させていただいたのですが、ふだん非常に迅速に動く運動神経のいい社員が、アイマスクをすると非常に足取りが重く、とても慎重になっていましたね。目が見えない故の怖さがあったのでしょうか。それでも、アイマスクをしている側が、いろんなものに触ってみたり耳をそばだててみたりというところが目についたのは、介助役を信頼しているけれど、やはりそれだけでは感覚として不安があるからだということが伝わってきました。私は元々乗務員出身で、現在は乗務員教育を担当しております。日頃から目の不自由なお客様もご利用されますので、相手の立場を経験することは非常に重要だということ、それを公共的な場所で体験するのは有益だと感じました」

その流れでDID会場に到着され、事前のワークショップの後に暗闇での研修に入られました。実際、暗闇での研修をご体験されていかがでしたか?

井島「真っ暗闇で周りの状況がわからない中、仲間からの言葉がけが非常にありがたく感じました。だから、自分も声をかけようという気持ちが自然に出てきましたね。あと、研修後のアンケートで書かれていた中に、『暗闇で立場が逆転したことで実感したことは、日常では健常者である我々が、ハンディキャップのある方に対して、何か困っていることはないですか、お手伝いできることはありますか、とお声がけするなど思いやりや優しい心をもつことが大切』というものや、暗闇の中で言葉で伝えることの難しさ、相手の状況を理解しようという思いやりの必要性、コミュニケーションの大切さといったものが多かったですね」

加藤「声のコミュニケーションだけでは、自分の言いたいことが伝えきれないという感想は多かったですね。また、声が出ていない人は存在が消えてしまう。すると、知恵の源泉から漏れてしまい、知恵の結集ができないと感じましたね。改めて、我々は視覚に頼っている部分が多いこと、だからこそコミュニケーションを密にしていかなければならないことを痛感しました」

会場でのワーク

樋口「一日研修のほかに、管理者向けの研修も利用させていただきましたが、職場がぎくしゃくしているときに、暗闇でグループワークをやると結束力ができるのではないか、という意見もありましたね。また、色々なハンディキャップのある方々に対する気持ちが大きく変わった、当社としては親会社も子会社も混合させ、みんなで横一線結束をして向かっていかなければ、という気持ちも生まれた、という意見もあがっていました」

一日研修のほかに、管理職の方向け、あるいは新人研修としてもご利用いただき、ありがとうございます。暗闇の中で、ご自身について発見されたことなどはありましたか?

井島「ふだんから、自分がリーダーシップを取るタイプではなかったのですが、研修では意外と、声をかけることができていたことに気づきました。状況が変われば、自分自身も変われるのかなという機会になりましたね」

樋口「研修の成果かわかりませんが、確かに井島はポジティブになり、自分からこれをやりたい、あれをやりたいと言ってくるようになりましたね」

木下(以下きのっぴー)「すごい、大きな前進があったのですね!」

井島「自分の思っていることを表に出していかないと、なかなか相手に伝わらない。ここはいいや、という考え方ではなくて、仕事上でも自分の意見を出していくことで、向上心が芽生えてくると思います。研修の成果はあったと思っています」

加藤「個人的には研修の後、ある電車に乗っていまして、目の不自由な方がいらっしゃると、階段やエレベーターまでご案内させていただくようになりました。こういうことが世の中に広く浸透していけばいいなと。落とした滴は一滴かもしれませんが、それがじわじわ広がって、みなさんが住みやすい世の中になればいいですね。そして、そういうお客様が乗りやすいバスにしていきたいです」

きのっぴー「すでに教育の手法にも取り入れられているということですね。すばらしいですね」

加藤「無意識でいるとどうしても忘れがちになりますから、学んだことをどう活かしていくかということが自身の成長にもなりますね。それを自分が受け持つ生徒に反映させていけば、企業としても、社会的責任を果たせるのではないかと微力ながら感じているところです」

東急バスの皆様

きのっぴー「バスは、僕たちのような視覚障害者にも身近な存在なので、ビジネスワークショップを通しての変化の様子をうかがえて、すごく嬉しく思います。東急バスさんに乗りたいなと思わせてくれますよね」

樋口「うちの会社は、東急電鉄から分社したのですが、最初に掲げたビジョンが『日本一のバス会社になる』というものでした。そこには、お客様から愛される会社へという思いがあったと思います。更に10年後のビジョンとして『地域の足となり、“暮らしのいろいろ”をつなぐ会社になります』と掲げており、これはより一層地域の連携を深め、コミュニケーションを重視していこうという思いが込められております。今回のDIDでの研修は、ハンディキャップのある方々の気持ちを理解するためのいい機会だったと思います。ほかにも、バリアフリー研修会など行っておりまして、車椅子の方と一緒に学習したり、手話の講座をやったりと、触れ合う時間を設けています。また、ホスピタリティーの研修では、真っ暗、あるいは白内障の疑似体験ができるゴーグルを購入して、バスの中で体験のようなことも実施しています」

加藤「なかなか、言葉だけでは伝えきれないところもありますので、研修では体験型のものを推し進めています」

実際、研修を受けていただいたことで、乗務員さんたちが変化されたことはありますか?

樋口「参加していない乗務員でも、興味をもつ人間が出ていることは価値があるのではと思っています。実際体験した者達が伝えていくことで、参加してみたいという興味が湧くことはいいことだと」

加藤「私が授業で必ず生徒に伝えているのは、目の不自由なお客様が乗車されたら『失礼ですがどちらまで行かれますか?』と必ず聞きなさい、ということでした。そうすればお客様も安心していただけると思うからです。以前は教えながらも実感はなかったのですが、私自身がDIDを体験したことで、より確信をもって指導できるようになりました」

きのっぴー「DID研修でそのように思われたことは、すごいことですね。視覚障害者も人によっては、自分もそうですが、自分で降車ボタンを押したい気持ちもあったりします。将来的にもっとわかりやすい場所にボタンがあったらなぁ…と思うこともありますが、もちろん、事前にそのようにお声がけいただけることは、とてもありがたいことで、うれしいですね」

本日はうれしいお話、ありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いします。

(※2014年5月取材)

《後日談》
インタビューでも触れられていたホスピタリティーの研修に、DIDのアテンドスタッフが講師として招かれ、視覚障害者のお客様対応について、座学と実習での研修が行われました。後日改めてHPにてご報告させていただく予定です。

    〜ご体験されたみなさんのアンケートより〜
  • 「とにかく仲間の大切さを感じました。声を出し合い、互いの場所を感じ合いながら、少しずつ前に進めた時は、それを痛感しました」
  • 「暗闇では、言葉で伝えないと伝わらない。自分ができることは誰でもできると思わず、聴く耳をもつ。細かく丁寧につたえなければならないと思った」
  • 「お客様の乗降時に優しい声がけをしていきたい。心のこもった接客、声のトーンなどで、車内をやわらかい空気にするようチャレンジしていきたい」
  • 「周りの意見に対して聞く耳をもつことは重要ですが、自分の意見も主張するときは主張するなど、メリハリも重要だと感じました。また、乗務中に関しては、一期一会ではありますが、お客様と少しでも関わりをもち、次につなげることが必要だと思いました」
  • 「積極的に意見を出すことの重要性、自分の存在を周りに知ってもらうことの大切さを痛感いたしました。お客様と充分なコミュニケーションがとれていないと、思わぬところで不便さを感じさせてしまっているのだと気づきました。逆に言えば、コミュニケーションがとれていれば、お客様に満足していただけることも可能なのだと思いました」
  • 「バスには多くのお客様が乗車されます。多種多様な対応が必要になります。限られた状況の中で、乗務員、できるだけのことをやっていますが、さらに一歩踏み込んだ行動が必要だと感じました。技術、運転操作、ご案内含め、今回の研修の気付きを活かす場面は多々あると思います」
【東急バス株式会社】www.tokyubus.co.jp
バス東急電鉄のバス部門を分社化し、1991年10月より営業を開始。
運行エリアは東京23区西南部から川崎市・横浜市の北部が中心。一般路線バスのほか、深夜急行バス、空港直通バスなども運行している。営業所&案内所は都内、川崎・横浜地区に14カ所、従業員数は約2400名(営業所、案内所数、従業員数は子会社含む)。社是は「ヒューマンに行こう」