企画トップスペシャルインタビュー
三井不動産リフォーム株式会社
代表取締役社長 尾崎昌利氏
Profile
1980年、東京大学経済学部卒業後、
三井不動産株式会社に入社。
2003年不動産証券化推進部長、07年企画調査部長、09年執行役員、不動産ソリューションサービス本部長、11年三井ホームリモデリング株式会社(現三井不動産リフォーム株式会社)代表取締役副社長を経て、12年4月より現職。


ダイアログを体験して、瞬時に「これだ」と感じた

●ダイアログ・イン・ザ・ダーク(以下DID)をご体験されたのは、いつごろでしたか?

今年(2012年)の2月、一般参加でしたね。

●そこでどのようなことをお感じになられましたか?

日常、いかに目に頼って生活しているか。そのウエイトの高さをまず実感しました。そして、全く見ず知らずの人たちと“暗やみ”という異空間に入ると、歩くという行為ひとつとっても情報発信したり受け止めたりしないと前に進めないということ。終わったときには、連帯感のようなものを強く感じました。視覚障害者の方と一緒の時間を過ごしたことで、その方達が特殊な人ではなく普通の人であるという思いと、それとは逆に、我々が持っていないものをもっている人でもあるということが、解説されるのではなく実感として理解できたこともとても良かったです。仕事でもプライベートでも、共通の目標や目的があるものですが、そこに向かっているのは決して自分一人ではない。互いに支えたり支えられたりしながら行動が起こるものなんだということを素直に実感できたのは、とても良い機会だったと思います。

●DIDを全社員の方に体験させたいなと思われたのは、その時ですか?

はい、瞬間的に、これを使わせていただこうと思いましたね。そして、やるなら今年しかないと。

今年は三井不動産リフォームという会社の創業年度にあたります。社名変更だけでなく、体制やグループの中での位置づけも大きく変わりました(※1980年に「三井ホームサービス株式会社」として設立され、2012年4月より現在の社名に変更となった)。当社の従業員は300人余おりますが、その300人はみんな“創業者”であり、船に例えるなら“船長”。300人全員が、これから同じ船に乗って動かしていくんだという意識を瞬時にもつために有効な手法は何かを考えていたところ、DIDを体験して「これだ」と思ったのです。

チームで仕事をするという意識が高まれば、組織全体のパフォーマンスも良くなる

●全員が共通の体験をすることも大切ですよね。

そう。仕事は、必ずチームで行なっています。自分一人でやっている部分があるとしても、外部には必ず一緒にやる方がいる。チームで仕事をするということは、支えたり支えられたりしながら、成果をつくっていくということ。その意識をもつ人が増えれば増えるほど、組織全体のパフォーマンスも良くなるのではという素朴な信念を持っています。それを言葉で何度も説明するより、DIDのような究極の、異質な経験を社員全員で体験してもらい、自分なりに何かを感じてほしかった。体験後、ほぼ100%の社員が「おもしろかった」「とても興味深かった」「何か感じるところがあった」と言っています。そういう印象がたった3時間で起こる仕掛けというのは、それほど世の中にあるものではないでしょう。今回はかなりいい形で、DIDを使わせてもらったというのが正直な感想です。

●体験前と後で、社長ご自身で変化を感じたことはありましたか?

「変わった」というよりは、むしろ「やっぱりそうなんだな」という感じのほうが強かったですね。自分の仕事スタイルは、DIDで経験することにハマりやすいスタイルだったのかもしれません。

仕事で失敗した場合、ミスの原因をみんなで考え、共有化はできますが、成功した場合は、お客様が良かったとか偶然とかで終わってしまいその成功の理由を認識できていないことが案外多い。成功の共有化のためにも必要なことは、「対話」だと思っています。昨年、ほぼ1年かけて、全社員と1回は懇親の場を設けるという試みを行いました。3000人規模の会社なら、それは無理ですよね。加えてDIDの研修なら、ある一定期間内に300人全員が共通経験をもつことができる。自分の考えている方向と、DIDの考え方が合ったのかなと思います。

会社の出発点に何を据えるかは難しいところですが、この会社の社員は、一人ひとりがリフォームという仕事が好きで、お客様に喜んでいただいたときが一番うれしいと生き生きと話してくれる。それなら、本当にそうなれるような会社の状況をきちっとつくることが、こちらの仕事だと思っています。

経験に頼ることは、目に頼ることと同じ

●社員の方がビジネスワークを体験されたとき、現場の方はつなぎ、デザイナーの方はフリーな服装、営業の方はスーツと、多種多様な服装の方が一同に集まられていたのが興味深かったです。それだけ多様な能力をもった方たちが同じ船に乗って、お客様対応されているのですね。

知っていても話すのは初めてとか、いろんな人が同じ会社にいることがわかるのはいいことですよね。チームによっていろいろ個性が出てきたのも、非常に面白かった。企業組織におけるチームのかけ方を考える上でも、改めて勉強になるところはありました。1つの経験をベースに、連帯感を持ちながら、自分たちの創意工夫でいろいろ動けるようになってもらえればと願っています。

経験に頼ることは、目に頼ることと同じではないでしょうか。
見えていなかったり拾えていなかったりしたものが、逆に見えている人、拾えている人は、仕事も早く上手になる。でも、環境が大きく変わると、そのスタイルが通じなくなって折れてしまったりもする。そうした試練の時にも、もっと見よう、聞こうとしている人のほうが、適応力が変わってきます。

暗やみで見えない世界では、目以外のものを使ってなんとか進むことができる。仕事でも、経験に頼るだけでなく、知りうる情報に対してどれだけ素直に前向きに考え、動けていたか、フラットに、“ふつうな状態”になってみることは必要だと思います。そういう意味でも、DIDの「ゼロからやってみましょうよ」という感覚も、非常におもしろかったのです。