ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパンはこの11月2日で10歳になります。
10年前の今頃は東京ビックサイトの一室に落ち葉を敷き詰めるため、
私は釧路にある森の中で葉っぱを拾い集めていました。
まっくらで見えない空間なのになぜだかきれいな色の
葉を探す自分が不思議でなりませんでした。
ビックサイトの一室はまっくらになり釧路の森と繋がったのです。
10年を振り返りこの間に大勢の方たちに支えられここまで育ってきました。
一体何人の方たちの応援があったのだろうと振り返ると胸が熱くなります。
けれどその方たちにまだ何もお返しができていないのです。
何とか常設に漕ぎ着き感謝の気持ちを表したいと切望しています。
山あり谷あり底なし沼ありのダイアログですが、ともあれ10年は続けられました。
10年を一緒に祝ってください。
皆様と一緒に育ててきたダイアログジャパンの誕生日です。

※現在ダイアログTOKYOを外苑前にで開催中です。
ダイアログ・イン・ザ・ダークが10歳の誕生を迎えたとのこと、誠に以外であり、実に慶びに耐えません。
「誠に以外」と言いますのは、人は暗闇ほど不気味に感じ・嫌悪し・恐れる世界はないにも関わらず、
人為的に作り出したDark Worldの世界に6万名の人々が訪れたことの事実です。これは、16年
前に、このプロジェクトの提唱者であるドイツのハイネッケ氏の哲学に強く共感された金井真介様が日本
国内において自ら実践したプロジェクトに大勢の市民がその想いを共有したからにほかなりません。金井
真介様は次のようにその想いを述べています。「参加者は楽しむことで自分のことだけではなく、相手へ
の思いやりを持つことができます。それは、視覚障害者に対して見えないでかわいそうだとかいうもので
はなく、お互いの文化を知り、それぞれ得意なこと、得意でないことを知った上でどう一緒にできるかを
自然に考えていくこととなります。目を使わないのは不便だけれど、決してその人の人生が不自由なわけ
ではない。体験後のアンケートの中には、みんながどうあればいいかを考え、社会を少しでもいい方向に
変えていく道を考えてみたいという内容のものが多くあります」と。
私自身が視覚障害当事者でありながら、金井氏のこの言葉に心から目覚めさせられる思いです。暗闇の
世界を、マイナス指向だけで捕らえるのでなく、真っ暗な中でこそ見えてくるもの、研ぎ澄まされる感覚
があることに気づいて、目の健常な人(晴眼者)にも知って欲しいという金井氏の実践と熱意は驚きであ
り崇高さを感じさせられます。実は、視覚障害者への理解も認識も、その気づきがない限り生まれないも
のだと私自身思い続けてきた数十年だったのです。視覚障害者の理解を「アイマスクで体験しようとする
やり方が一般的のようですが、あれは、単に見えないことの恐怖と不安の体験に過ぎず、ナンセンスなも
のだと私は断じ切っているのです。暗闇の中の対話(ダイアログ イン ザ ダーク)は一件別世界に住
む晴眼者と視覚障害者が、ダイアログ イン ザ ダークを通して人間の持つ可能性や順応力の素晴らし
さを確認する場なのです。目の健常な人が暗闇の中で視覚障害者のアテンダーが注いだビールのグラスを
手渡されるとき、明りの無い場所で落葉を踏んだとき、それまで経験しなかった実に新鮮な感触を味わう
ことでしょう。
誰もが当たり前に持っている感覚は実は見えることに依存するために眠っているだけのことで、それが、
見えない世界で目覚めさせられ、研ぎ澄まされて力になる姿を実感する場として、ダイアログ イン ザ
ダークに意義を感じていただければ、今よりもはるかに視覚障害者への理解が進み、盲人が築いてきた文
化の偉大な面にも思いを巡らせてもらえるのではないかと絶大な期待を抱くのです。 「暗闇の中の対話」
「闇の中で見える明かり、これらは、とりもなおさず視覚障害者への真の理解の誘導の糸となり、明の世界
と暗の世界が単に両極の世界としてあるのではなく、以外に接近した距離にあって、見えない者が暗い世界
で高めた感性や生き様が光溢れる世界に住む人々の文化の上にも示唆を与えるものであることを体験を通し
て実感させる試みであり取り組みなのだと思うのです。視覚障害当事者である私に言わせれば、「見えない
ことは決して怖い世界に住むことではなく、明るさを一つ一つ獲得する楽しさに満ちた挑戦の世界でもある
のです。 ドイツのハイネッケ氏の提唱に感動し、日本での実践を決意して今日までこれを成長・発展させ
てこられた金井真介様に、深く敬意と感謝を表しますとともに、金井様が切望されるダイアログ イン ザ
ダークの日本での常設が一日も早く実現されますよう、心からの熱いエールを贈りたいと思います。
岩上 義則 日本点字図書館館長